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語源で覚える "respite"

"respite" は英辞郎 を見ると、名詞では[1.〔嫌なこと・労働・苦痛などの〕小休止、中休み、中断  2.〔一時的な〕延期、遅延  3.《法律》死刑執行猶予◆【同】reprieve]とあり、動詞では[〔~に〕一息つかせる、〔~を〕猶予する]としています。

 

"respite" は覚えにくい単語だと思いますが、原因の1つには "despite" (~にもかかわらず) が頭に浮かぶこともあるのではないでしょうか。

 

Wiktionary を見ると "despite" の語源は

From Old French despit, from Latin dēspectum (looking down on), from dēspiciō (to look down, despise).

で、文節(※英辞郎が文節という用語を『単語の区切り位置を「・」で示す。』と定義しているのでここではそれに従っています)は[de・spite]です。

 

"respite" も re-spite か res-pite なのかなと思ってWiktionary を見ると、こちらは

From Anglo-Norman and Old French respit (rest), from Latin respectusDoublet of respect.

とあり、文節も[res・pite]です。

なるほど、"respite" は "rest" なのか、と考えるとあっさり覚えられそうです。

 

 

 

あまり一般的ではないかも知れませんが、レスパイトレスパイトケア という用語も主に育児介護障害医療の分野で使われているようなので、こちらから記憶する手もあります。

[レスパイト・ケアとは、在宅で乳幼児障害者(児)、高齢者などを介護(育児)している家族に、支援者が介護(育児)を一時的に代替してリフレッシュしてもらうこと。また、そのようなサービスのこと。]

と説明されていて、ウィキペディアにも Respite care という項目があり和製英語ではありません。

 

それにしても、Respite care という英語の用語をそのままカタカナ英語にするのはどうかなという気はします。

"respite" は英辞郎 のレベルは11で、これは アルク「標準語彙水準SVL12000」(SVL=Standard Vocabulary List) では最上級の「自分の視野を広げる英単語」に分類されています。

因みにこの下のレベル10は上級で、「英文雑誌を楽しめる英単語」です。

 

こんな殆どの人に馴染みのない単語をそのままカタカナ英語にするくらいだったら、レスト・ケアの方が余程わかりやすいのではないでしょうか。

"rest" には他動詞として[〔~を〕休ませる、休息させる、休憩させる、休養させる]という意味があり違和感はないと思うのですが。

 

ウィキペディアRespite care にも[The term "short break" is used in some countries to describe respite care.](一部の国では、レスパイトケアを説明するために「ショートブレイク」という用語も使用されている)とあるので、その国に合ったように用語を定義しているところもあるようです。

まあ、日本はわけのわからないカタカナ英語を導入してわかったような気になって使っている不思議な国なのでレスパイトの方が好まれるのかも知れませんが。

 

 

 

ついでに、Wiktionary の Etymology の最後に Doublet of respect.(respect の二重語 )とあるので検索してみると、武庫川女子大学文学部 英語文化学科教授安達一美さんの2009年の[研究ノート]英語語彙における二重語の意味の差異化(第5 回)―ラテン語起源(2) が見つかりました。

以下は、その一部引用です。

 

respect (尊敬、尊重) vs. respite (一時的中断、猶予) この二重語は、ラテン語動詞respicēreの過去分詞respectusが語源である。 respicēreは接頭辞re-(後に)とspecere(見る)が組み合わされて形成された語で、 意味は「後ろを見る、周りを見る;考慮に入れる、熟考する、(助けを)当てにする」である。

respectはラテン語からの直接借入で14世紀に英語に入っている

。初期においてはラテン語の成句habere respectum(have respect)、sine respectu (without respect)を英語に置き換えたものが主であった。to have respect (関係がある) は、15世紀後半に「見ることで注意を払う」「注目する」の意味が付け加わる が、17世紀前半に廃義となり、16世紀中ごろには、「考慮に入れる」が付け加 えられた。without respect (差別しないで、区別しないで)は16世紀半ばから、 with respect (比較的、適当な釣合いで)は16世紀末から使われるようになるが、 それらの意味は廃義となり、前者は「考慮に入れずに」、後者は「関連して」 の意味で残っている。 「(人やもの・事に対して示される)敬意」の意味は、16世紀後半から使い始 められ、現在ではこの語義が第一義になっている。この意味の発達により、to have respect for (を尊敬する)や、to have the respect of… (に敬われる)、to pay one’s respects (敬意を表する)、to pay one’s last respects (最後の敬意を表する、 葬儀に出席する)の表現が生まれる。with(all due) respect (…には失礼ですが) は敬意を払いながら意見の違いを示すための丁寧語として19世紀半ばごろから 使われるようになった。

respectに「関係」の意味が発達したのは16世紀後半から末であるが、17世紀 前半に廃義となっている。しかし、成句としてas respects (…に関しては)やin respect of/to (…に関して)の用法は今も使われている。in respect of (…に関し て)は、初めは「…と比較して」の意味で14世紀に使われ始め、16世紀と17世 紀では頻繁に使われていたが18世紀中ごろには廃用となる。「比較」の意味で はなく「…に関して」の意味での使用は16世紀ごろからで、現在に至っている。 respectに「(人やもの・事に対する)差別、不公平、ひいき」の意味が16世紀 前半に発達した。respect of personsは「特別待遇、えこひいき」を意味する。 15世紀半ばには二重語のrespiteの意味でも使用されるが16世紀半ばに廃義と なっている。この他、廃義となった語義も多く、「地位・身分」は17世紀初め から中ごろまで用いられたが廃義となっている。また、「意見・見解」の語義 は17世紀後半に一時期に使われた後に廃義になる。 respiteは、語源のラテン語から古フランス語respit (中断,遅延,延期)(Mod.F répit)を経由して、「(考慮によって与えられた)延期」の意味で、respectよりも早い時期の13世紀末に英語に入る。to put in respiteは「延期する、猶予す る」の意味になる。respiteは14世紀には「(労働・苦しみ・戦争の)一時停止」 の意味を発達させて今に至っている。なお、14世紀後半から15世紀初頭にかけ てrespect, regard, comparisonの意味で用いられるがその後は廃義になっている。 「(絞首刑の)執行猶予」は18世紀の初めごろから使われるようになる。15世紀 から16世紀後半までの間、respectとrespiteの中間的な形態として、respete ([名 詞]一時的中断 、[自動詞]中断する、話を止める、[他動詞]保留する、延 期する)が存在した。 

 

 

古フランス語の respit がどのような経緯で(中断,遅延,延期)という意味を持つに至ったのかは不明ですが、接頭辞re-(後に)とspecere(見る)が組み合わされて形成された respicēre が語源となっている "respite" の文節が[res・pite]というのも古フランス語を経由して英語に入ってきたからでしょうか。