day care の意識の差
語源で覚える "respite" を書いている時に レスパイトケアから デイケア を連想してチェックしてみると、Daycare とデイケア の意識の差が大きいことに気付きました。
"day care" は、 英辞郎 では[デイケア、デイサービス◆高齢者、幼児、病人などを預かって、日中に世話または介護をすること。]としていて、これを見る限りでは "day care" には高齢者などと幼児との間に意識の差があるようには感じられません。
デイケア をgoogel検索すると結果の先頭に
[通所リハビリテーション(デイケア)とは、要介護者が介護老人保健施設、病院、診療所等に併設された施設、介護医療院に通い、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士等の専門スタッフによる「機能の維持回復訓練」や「日常生活動作訓練」が受けられるサービスです。]
という項目が表示されることからわかるように、日本ではデイケア を主に高齢者を対象としたサービスと定義しているようです。
[デイケア(英: day care)は、福祉・医療関係施設が提供するサービスの一種で、医療保険・介護保険による「通所リハビリテーション」と医療保険による精神科デイケア、認知症デイケアがある。]
と記載されていて、
[この項目では、成人を対象としたデイケアについて説明しています。児童を対象とするデイケアについては「保育」をご覧ください。]
と明確に成人を対象としています。
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と、Child care にリダイレクトされます。
そして、Child care では明確に
[Child care, otherwise known as day care, is the care and supervision of a child or multiple children at a time, whose ages range from two weeks of age to eighteen years. Child care is a broad topic that covers a wide spectrum of professionals, institutions, contexts, activities, and social and cultural conventions.]
と、child care = day care としています。
デイケアセンター も同様で、"day care center" wiki" でgoogle検索すると Child care が表示されます。
[デイケアセンター (Day care center) とは、デイケアを行うために設けられた専門の施設で、在宅の高齢者や精神障害者などの療養者が、昼間の通所で治療、リハビリテーションを受けることのできる場である。英語でdaycare centerというと託児施設や保育所のことを指すので注意が必要である。]
と但書があります。
成人や高齢者に対しては、AARP (旧アメリカ退職者協会)では Adult Day Care ( Adult Day Care: What Family Caregivers Need to Know )と言っていて、Alzheimer's Association (アルツハイマー病協会)も Adult Day Centers のような使い方をしています。
"day care -child" (childをキーワードから除外) などをキーワードにして google検索すると、少なくとも上位は同様の結果が返ってきます。
高齢者に対するデイケア は "adult day care" や "elderly day care" などのような表現が殆どで、時々見つかる "day care" も American Family Services Foundation の Day Care Center や Royal Day Care などのように対象は "children" です。
辞書に関しては、現時点では結構曖昧です。
例えば Cambridge Dictionary では
と、どちらも対象としています。
日本の辞書では、ちょっと誤解を招きかねない書き方をしているものもあるようです。
weblio に掲載されている 研究社 新英和中辞典での「day care」の意味 では
▶daycare
▶day‐care
としているので、名詞の "daycare" は対象が未就学児童や高齢者・身体障害者などで形容詞の "day-care" は対象が働く親の子なのかと勘違いしそうです。
手持ちの オーレックス和英辞典 (初版)では、
としています。
collins の day care を見ても、そのようなことはなさそうです。
英辞郎 では冒頭に書いているように "day care" を
[デイケア、デイサービス◆高齢者、幼児、病人などを預かって、日中に世話または介護をすること。]
としています。
英辞郎 on the WEB (ProLite) で "day care" を検索すると該当件数は103件です。その内の 6件は "adult day-care center (養老所、老人の面倒を見る施設)" など頭に "adult" が付くものです。
これ以外で高齢者と関係するものは、
day-care 【他動】
〔人を〕デイケア施設[託児所]に入れる
day-care facilities
→ day-care facility
デイケア施設、デイサービス施設、(昼間)保育施設
day-care facility
1. 託児所◆【参考】day care
2. デイケアセンター、デイサービスセンター◆高齢者向けにデイケア(day care)を行うための施設 デイケア施設、デイサービス施設、(昼間)保育施設
day-care institution デイケア施設
day-care provider 介護担当者
day-care rates デイケア料金
do day care in one's home 自宅でデイケアを行う
24-hours-a-day care 24時間体制の看護drop someone off at day care (人)を車で送ってデイケアに預ける
位しか見当たりません。
しかも、day-care provider や day-care rates などはちょっと怪しくて、google検索すると何れも child care の場合がヒットします。
高齢者に対してはやはり adult などを付ける必要がありそうです。
これ以外の大部分は、
day-care center 保育所、託児所◆仕事を持つ親が日中に子どもを預ける施設
day-care license デイケアのライセンス◆託児所や保育所を経営するための免許
day-care fee 保育料
attend day care 託児所に通う
in day care 託児所で
after-school day-care facility 放課後デイケア施設
など、幼児や児童に関するものが殆どです。
([doggie day care 《a ~》犬の託児所[保育園]]なども含まれています)
また、
Day Care Division 【組織】保育課◆日本の厚生労働省の
とあったので、政府の 部局課名・官職名英訳名称一覧 を確認すると確かに "Day Care Division" となっていました。
保育 という用語が規定されているので "day care" を高齢者専用のデイケア に割り当てたのだろうけれど、デイケアというカタカナ英語を導入するのならもう少し考慮すべきではなかったのかという気はします。
そういえば、ニュースにあった 国立国語研究所 の 「外来語」言い換え提案 の中でも
デイケア = 日帰り療養 通所リハビリ
という言い換えが提案されていました。
最後に、"day care" なのか "daycare" (day-care) なのかに関しては、google検索の結果からは "day care" の方が好まれているようです。
これは一つには The Associated Press Stylebook (APスタイルブック:AP通信が編纂・発行するスタイルガイド) などが "day care" を推奨していることもあるようです。
[day care Two words, no hyphen, in all uses.]
としています。
けれども、例えば BuzzFeed の BuzzFeed Style Guide のように Merriam-Webster や The Associated Press Stylebook 、 The Chicago Manual of Style (シカゴ・マニュアル・オブ・スタイル:シカゴ大学出版局が編纂・発行するスタイルガイド) が推奨としながらも自身のスタイルガイド では[daycare (not day care)]としているようなところもあるようです。
( BuzzFeed が信頼できるオンラインメディアかどうかは別にして)
オンライン辞書では、 LONGMAN や Merriam-Webster は "day care" です。
どちらも、"daycare" で検索すると "day care" が返ってきます。
LONGMAN には "day care" という項目しかありませんが、Merriam-Webster では[variants: or less commonly daycare \ ˈdā-ˌker \ or day-care]としています。
Oxford Learner's Dictionarie の"day care"
collins では、"daycare" で検索すると British-English としての定義が返ってきて、"day care" で検索すると American-English としての定義が返ってきます。
"American:day care" としては Webster's New World College Dictionary 4th Edition の定義を返し、 "day care" や "day-care" では Penguin Random House LLC や HarperCollins Publishers Ltd の定義が表示されます。
Columbia Journalism Review. のWebster’s new dictionary means change for journalists や GRAMMAR 101: CHILDCARE, CHILD-CARE, ELDER CARE AND ELDERLY CARE などを拾い読みしていると、"child care" や "health care" 、"elder care" 、"elderly care" などの複合語に関する感性の大きなギャップを感じます。
例えば、The Associated Press Stylebook では "cellphone" としていますが GRAMMAR 101: CHILDCARE, CHILD-CARE, ELDER CARE AND ELDERLY CARE の筆者は [I still think it’s strange when I see the word cellphone, but it is quickly becoming the norm.]といっています。
日本人が誤解する英語 の中で、アメリカの大学の日本語学部の学生が「入口」を「人口」と書いた日本人の研修グループ向けの案内図を作成して直すように進められた時に「なにもそこまでしなくたっていいでしょう。だってみんな見ればわかるはず」とそのままコピーを作って配ってしまったという事例を挙げていたことを思い出します。
[彼女には、おそらく、「入口」だろうが「人口」だろうが、同じようにみえていたのでしょう。そして、自分には抵抗感がないのだから、他の人でも、それがたとえ日本人であってもさほど気にすることはないだろう、という気持ちだったのでしょう。
日本人の作った英文を見ると、これと同じような現象に出会うことがしょっちゅうです。これは、英文添削を依頼された学術論文から、広告のキャンペーン・スローガンに至るまで漏れなく目にする現象ですが、特に英語の「冠詞+名詞」に対して書き手の持つ ”気持ち” が、彼女の ”気持ち” に酷似しているように思えてなりません。具体的に言うと、”the” だろうが ”a” だろうが「無冠詞」だろうが、「単数形の名詞」だろうが「複数形の名詞」だろうが、みな同じようなものに見えて、自分に抵抗感がなければ、他の人でも、たとえ英語を母国語とする人であっても、さほど問題なく受け入れてくれるだろう、という安易な気持ちが感じられるのです。]
確かに "cellphone" だろうが "cell phone" だろうが私には大きな違いは感じられません。
単に "cellular phone" → "cell phone" → "cellphone" と推移してきただけのように感じます。
日本語の場合、携帯とケータイでは使用される状況・人などから受ける印象が異なりますが同じような感じなのでしょうか?
GRAMMAR 101: CHILDCARE, CHILD-CARE, ELDER CARE AND ELDERLY CARE の中では、
[Further still, some may say that “health care” refers to the actual care you receive from medical professionals, whereas “healthcare” refers more to the system (insurance, costs, reform, etc.).]
と言及していました。