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Dear My Friend の違和感

Every Little Thing のヒット曲に Dear My Friend というものがあるようです。

 


実は私は Every Little Thing というグループ名は知っていましたが、どのような傾向のどのような歌を歌っているのかは全く知っていませんでした。

 

では何故 Every Little Thing が Dear My Friend という曲を持っているのか知っているのかというと、マーク・ピーターセン の著書『実践 日本人の英語 (岩波新書) 』の中で「不気味な曲名」として取り上げられているので強く印象に残っているからです。

 

引用というには少し長いかも知れませんが、以下に抜粋します。

 

不気味な曲名

 1つ付け加えておくと、所有形容詞や冠詞について、いずれの用法にも同じはっきりしたルールが1つだけある。 それは、たとえば、ビートルズの名曲 "The Long and Winding Road" (ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード) や、ジャズ・スタンダードの "My Funny Valentine" (マイ・ファニー・ヴァレンタイン) のように、形容詞が修飾している名詞に、さらに冠詞か所有形容詞が付く場合、その冠詞か所有形容詞が必ず一番先に配置される、というルールだ。 つまり、 "Long and Winding the Road" や  "Funny My Valentine" などのような英語はないのである。

 そのため、1980年代に日本で "Dear My Friend" というような言い方を初めて見かけたときはときには、驚いた。 存在しえない英語なので、不気味に感じさえした。 ちなみに、1997年に発売された Every Little Thing の曲 "Dear My Friend" の歌詞には "Best of My Friend" という文句もあるが、その意味は何なのだろうか、私には未だに謎である。

 

 

 

確かに、音楽が好きな人なら My Funny Valentine やジャンルは違いますが George Harrison(The Beatles) の My Sweet Lord などを聞いたことがあるのではないでしょうか。

もっと有名なところでは、 My Fair Lady (マイ・フェア・レディ) もあります。

だから私は マーク・ピーターセン の指摘はしっくり来ました。

 

ところで、この本を読んだ時点では私はてっきり Every Little Thing は英語の歌詞を歌うグループだと思い込んでいました。

何しろグループ名も曲名も英語っぽいので。

だからなぜこのような歌詞を書くのか疑問に思ったし、大手のレーベルなら英語の歌詞はネイティブ・チェックするだろうにと不思議に感じてもいました。

 

けれども、今回初めて youtube で曲を聞いて驚きました。

歌詞がバリバリの日本語で、ピンポイントで英語 (英単語) で表現した部分が英語としてはおかしく感じられるのでは、という印象を受けました。

そして、じっくり歌詞を聞いていると "Best of My Friend" という句の意味もなんとなくわかったような気がします。

これはきっと マーク・ピーターセン の想像するようなものなどではなく、まさに"ベスト・オブ・マイ・フレンド" という日本語が指しているものだと思います。 

(深読みしすぎでしょうか?単にノリでこう表現したのかも?)

 

日本語の歌としてなら、マイ・ディア・フレンドとディア・マイ・フレンドの何方が好ましく感じるかと言われれば、私もディア・マイ・フレンドの方が響きが良い、と答えるでしょう。

これは純粋な日本語の問題で、例えば "親愛なるわが友"  や "敬愛する私の友人" などと "わが親愛なる友" や "私の敬愛する友人" という表現を比較するようなものです。

歌詞上は  "Dear My Friend" や "Best of My Friend" ですが、 Every Little Thing が歌っているのを聞くと、"ディア・マイ・フレンド" や "ベスト・オブ・マイ・フレンド" と聞こえるので全然違和感を覚えません。

 

 

一方、マーク・ピーターセン が「不気味に感じさえした」と言っている気持ちもよくわかります。

「愛妻家」や「最愛の人」という言葉を聞くと私たちは好ましく感じると思いますが、例えばこれを日本語を勉強中の外国人が「妻愛家」や「愛最の人」と表現したらどう感じるでしょうか?

好ましい印象を受ける漢字ばかり使われているのに、場合や文脈、或いは人によっては不気味な印象を受ける可能性があるのではないでしょうか。

 

そして、 "Funny My Valentine" や "Long and Winding the Road" などの英語の単語の並びを見ると私も奇妙な印象を受けます。

"," などが抜けていないか、或いはペーパーバックなどだったら誤植ではないか、と最初に考えます。

 

なので、マーク・ピーターセン の主張もわかりますが、これだけ意味不明のカタカナ英語が蔓延している状況で日本語の歌を歌うグループの歌詞に注文を付けるのはちょっとかわいそうな気もします。

 

 

 

 

 Every Little Thing の  Dear My Friend を何回か聞いているうちに "Dear My Friend" に違和感を感じなくなってきたのでこれは少しまずいかも、と思って実際どれくらい使われているのか検索してみました。

すると、やっぱり思っていたように結構件数があって、google検索では "Dear My friend" の絶対検索は約102万件(About 1,020,000 results (0.45 seconds) )でした。

一方、"My Dear friend" の絶対検索は1360万件(About 13,600,000 results (0.46 seconds) )なので、こちらが正しい使い方で間違いないようです。

 

"Dear My friend" を使っているのは圧倒的に日本の音楽シーンのようです。

Every Little Thing の  Dear My Friend 

桑田佳祐 ( サザンオールスターズ) の  Dear My Friend

とある科学の超電磁砲 (アニメ) のエンディング Dear My Friend -まだ見ぬ未来へ- (ELISA)

Little Glee Monster の  Dear My Friend feat.Pentatonix 

の  Dear My Friend  (いざッ、Now というアルバムに収録されているようです)

TUBE の  Dear My Friend 

Dear My Friend (恋愛ゲーム )

Dear My Friend (新テニスの王子様 (アニメ)のイメージソング )

小西真奈美 の  Dear My Friend 

古澤剛 の  Dear My Friend 

JASMINE の  Dear My Friend 

鬼塚真紀 の  Ayano ~Dear My Friend~ 

 

以下、まだ沢山あります。

 

そして、韓国でも同様の現象が見受けられます。

Agust D(BTSSuga) の  DEAR MY FRIEND' (Feat Kim Jong Wan) 

Dear My Friends (韓国のテレビドラマ)

 

 

面白いのは TUBE の  Dear My Friend で、曲のタイトルは "Dear My friend" なのに、歌詞 の中では "my old friend" ときちんと書いています。

"波にまかれた my heart your heart" という一節もあるのでこれに合わせただけかも知れませんが。

 

 

 

同様に、"Dear My friends" もgoogle検索で件数を確認してみると、"Dear My friends" は約42万件 (About 420,000 results (0.58 seconds))、"My Dear friends" は約596万件 ( About 5,960,000 results (0.38 seconds) ) でした。

 

"Dear My friends"  は、韓国のドラマシリーズ (Dear My Friends ) があるのに意外に件数が少ない気がしないでもありません。

 

 

 

最後に、google検索では見つけることが出来ませんでしたが、"Dear My friend" も全く使われていないというわけでもないかも知れません。

QuoraCan one use “My dear friend” as a salutation for an informal letter? というトピックを見つけました。

でもやっぱり見解は複数あるようです。

""My dear friend" is a suitable salutation for an informal letter to a close friend. It conveys warmth and affection and sets a friendly tone for the letter."                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                      

と親しい友人への私的な手紙ならOKという人もいれば、"Yes, but it might sound strange and a little too chummy — as if you were trying to manipulate their emotions. " とちょっと疑問視する人など様々です。

この回答の多様性からも普段は使われていないんだろうなということが伺える気がします。

 

salutation で頭語の "Dear" は推奨されている(【ビジネス英語】英文メールの宛名:頭語の書き方6 Ways to Start an Email, and 6 to Avoid など)からといって迂闊に "Dear My friend" を使用しない方が問題が少ない気がします。